【完全ガイド】ブレーキパッドの交換時期はいつ?5つのサインと費用、放置するリスクを徹底解説

目次
はじめに:車の「命綱」、ブレーキパッドの重要性
毎日何気なく運転している愛車。アクセルを踏めば進み、ハンドルを切れば曲がり、そしてブレーキを踏めば安全に停止します。この「止まる」という、自動車にとって最も重要な機能を支えているのが「ブレーキシステム」です。その中でも、タイヤと一緒に回転する円盤(ブレーキディスクローター)を強力な力で挟み込み、摩擦の力で車を減速・停止させるという、まさに”縁の下の力持ち”的な役割を担っているのが「ブレーキパッド」です。
ブレーキパッドは、いわば車の「命綱」。このパーツが正常に機能しているからこそ、私たちは安心して運転することができます。しかし、ブレーキパッドは摩擦によって少しずつすり減っていく「消耗品」です。すり減ったまま放置してしまうと、ブレーキの効きが悪くなるだけでなく、最悪の場合、重大な事故を引き起こす可能性もゼロではありません。
「最近、ブレーキを踏むと変な音がする…」
「昔よりブレーキの効きが悪くなった気がする…」
「交換が必要なのはわかるけど、いつ交換すればいいの?」
「費用は一体いくらかかる…?」
この記事では、そんなブレーキパッドに関するあらゆる疑問や不安を解消するため、交換時期を見極める具体的なサインから、交換にかかる費用、放置した場合の恐ろしいリスクまで、車の専門家が徹底的に、そして分かりやすく解説していきます。あなたの愛車とあなた自身の安全を守るために、ぜひ最後までお読みいただき、正しい知識を身につけてください。

第1章|そもそもブレーキパッドとは?役割と仕組みを分かりやすく解説
交換時期の話に入る前に、まずはブレーキパッドがどのような部品なのか、その役割と仕組みについて理解を深めましょう。構造を知ることで、なぜ交換が必要なのかがより明確になります。
ブレーキシステムの心臓部「ブレーキパッド」の役割
現在、乗用車の多くには「ディスクブレーキ」というシステムが採用されています。自転車のブレーキをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。タイヤと一緒に回転している金属製の円盤「ブレーキディスクローター」を、左右からパッドでギュッと挟み込むことで、その摩擦力によって回転を止め、車を減速・停止させます。
この「パッド」にあたる部分が、ブレーキパッドです。ブレーキペダルを踏むと、その力が油圧(ブレーキフルード)によって「ブレーキキャリパー」という装置に伝わります。キャリパー内部のピストンが押し出され、ブレーキパッドをディスクローターに強く押し付ける、というのが一連の流れです。
つまり、ブレーキパッドは、運動エネルギーを摩擦によって熱エネルギーに変換し、車を安全に停止させるという極めて重要な役割を担っているのです。
なぜブレーキパッドはすり減るのか?その仕組み
ブレーキパッドが消耗品である理由は、その役割にあります。時速数十キロ、時には100キロ以上で回転する重い金属の円盤を、摩擦の力だけで止めるのですから、その際に発生する摩擦と熱は想像を絶するものがあります。
ブレーキパッドの表面は「摩擦材(フェーシング)」と呼ばれる特殊な素材でできており、この摩擦材がディスクローターと接触することで、意図的にすり減りながら制動力を生み出しています。消しゴムで文字を消すと消しゴムがすり減っていくのと同じ原理です。そのため、車を運転し、ブレーキを使うたびに、ブレーキパッドはほんのわずかずつですが、確実に摩耗し続けているのです。
ブレーキパッドの種類と特徴|あなたの車に合うのはどれ?
ブレーキパッドの性能は、主に使用されている「摩擦材」の材質によって大きく変わります。市販されているブレーキパッドは、大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれの特徴を知っておくと、交換時に自分の運転スタイルに合ったパッドを選ぶ参考になります。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
オーガニック系 | 樹脂やアラミド繊維などを主成分とした非金属系。多くの国産車に純正採用されている。 | ・ブレーキダストが少ない・ディスクローターへの攻撃性が低い・鳴き(異音)が少ない・価格が比較的安い | ・耐熱性が低い(フェード現象※を起こしやすい)・摩耗が比較的早い |
セミメタリック系 | 銅や鉄などの金属成分を多く含む。スポーツ走行向けのパッドに多い。 | ・耐熱性が高い・制動力が高い・摩耗しにくい(長寿命) | ・ブレーキダストが多い・ディスクローターへの攻撃性が高い・鳴きが出やすい・価格が高め |
セラミック系 | セラミック繊維を主成分とする。高性能車や輸入車に採用されることが多い。 | ・耐熱性が非常に高い・ブレーキダストが少ない・ディスクローターへの攻撃性が低い・鳴きが少ない | ・価格が非常に高い・低温時の効きが若干甘い場合がある |
※フェード現象:ブレーキを使いすぎることによって摩擦材が高温になり、摩擦係数が著しく低下してブレーキが効きにくくなる現象。長い下り坂などで発生しやすい。
一般的に、街乗りがメインで特にこだわりがなければ、純正品や純正同等品のオーガニック系で十分な性能を発揮します。スポーティーな走りを好む方や、より高い制動力を求める方はセミメタリック系、性能と快適性を両立させたい方はセラミック系を検討すると良いでしょう。
第2章|【絶対に見逃さないで!】ブレーキパッド交換時期を知らせる5つの危険信号
では、いよいよ本題です。ブレーキパッドはいつ交換すれば良いのでしょうか?最も重要なのは、車が発する「交換して!」というサインを見逃さないことです。ここでは、交換時期が近づいていることを示す5つの代表的なサインを、その原因とともに詳しく解説します。
サイン①:ブレーキを踏むと「キーキー」「ゴーゴー」という異音がする
ブレーキに関するトラブルで最も気づきやすいのが「異音」です。音の種類によって、緊急度が大きく異なります。
ブレーキを踏んだ時に、黒板を爪で引っ掻いたような甲高い「キーキー」「シーシー」という音が聞こえたら、それはブレーキパッドの交換時期が間近に迫っているサインです。
多くのブレーキパッドには「パッドウェアインジケーター」という金属製の小さな部品が取り付けられています。これは、パッドの摩擦材が一定の厚さまですり減ると、この金属片がブレーキディスクローターに接触し、意図的に不快な音を発生させることで、ドライバーに交換時期を知らせるための仕組みです。
この音が聞こえ始めたら、まだブレーキが効かなくなるほどの末期症状ではありませんが、「そろそろ交換の準備をしてください」という車からの合図です。無視せず、なるべく早く整備工場やディーラーに点検を依頼しましょう。
もし、ブレーキを踏んだ時に「ゴーッ」「ガーッ」といった、金属同士が擦れるような鈍く低い音が聞こえたら、それは極めて危険な状態です。
この音は、パッドの摩擦材が完全になくなり、土台である金属製のバックプレートが直接ブレーキディスクローターを削っている音です。この状態では、正常な制動力は全く得られず、ブレーキがほとんど効かない非常に危険な状態です。さらに、ディスクローターにも深刻なダメージを与えてしまい、後述するように修理費用が高額になってしまいます。
「ゴーゴー」という音が聞こえたら、絶対に運転を続けず、直ちに安全な場所に停車し、ロードサービスや整備工場に連絡してください。
サイン②:ブレーキの効きが悪い・甘い(制動力の低下)
毎日運転していると気づきにくいかもしれませんが、「以前と比べてブレーキの効き方が違う」と感じたら、それも交換のサインかもしれません。
「以前は軽く踏んだだけで効いていたのに、最近はペダルを深く踏み込まないと車が止まらない」と感じる場合、ブレーキパッドが摩耗している可能性があります。パッドが薄くなると、その分ピストンを多く押し出す必要があり、結果としてペダルのストローク(踏み込み量)が深くなるのです。
「いつもと同じ感覚でブレーキを踏んでも、前の車との距離が思ったより詰まってヒヤッとした」という経験はありませんか?これも制動力低下のサインです。パッドが摩耗して摩擦力が低下すると、同じ強さでブレーキを踏んでも車が止まるまでの距離が長くなります。これは追突事故の直接的な原因となるため、非常に危険です。
このような「効きの悪さ」は、ブレーキパッドの摩耗だけでなく、ブレーキフルードの劣化やエア噛みなど、他の原因も考えられます。いずれにしても、ブレーキのフィーリングに違和感を覚えたら、すぐにプロによる点検が必要です。
サイン③:ブレーキフルードの液面が下がっている
エンジンルーム内にある半透明の「リザーバータンク」に入っているブレーキフルードの量も、交換時期を判断する間接的な手がかりになります。
ブレーキパッドが新品の状態から摩耗して薄くなっていくと、その薄くなった分だけ、ブレーキキャリパーのピストンが外側に押し出された状態になります。ピストンが押し出された空間には、リザーバータンクからブレーキフルードが送り込まれて満たされます。
つまり、ブレーキパッドがすり減る=キャリパー内のフルード量が増える=リザーバータンクのフルード量が減る、という関係にあるのです。
リザーバータンクには「MAX(上限)」と「MIN(下限)」の目盛りがあり、液面がMINに近づいている場合は、ブレーキパッドが相当摩耗している可能性が高いと言えます。
多くの車では、ブレーキフルードがMINレベルを下回ると、メーターパネル内に(!)や「BRAKE」といったブレーキ警告灯が点灯します。この警告灯は、パーキングブレーキをかけている時にも点灯しますが、パーキングブレーキを解除しても消えない場合は、ブレーキフルードの不足、つまりブレーキパッドの著しい摩耗が疑われます。
「フルードが減っているなら、補充すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、それは根本的な解決にはなりません。パッドが摩耗している状態でフルードをMAXまで補充してしまうと、いざ新しいパッドに交換した際にピストンを元に戻した時、リザーバータンクからフルードが溢れ出てしまいます。ブレーキフルードは塗装を傷める性質があるため、非常に厄介です。
フルードの減少は、パッド摩耗のサインです。安易に継ぎ足すのではなく、まずは整備工場でパッドの残量を確認してもらいましょう。
サイン④:ホイールが異常に汚れる(ブレーキダストの増加)
特に欧州車などでよく見られますが、洗車してもすぐにフロントホイールが真っ黒に汚れてしまうことがあります。この汚れの正体は、ブレーキパッドとディスクローターが削れて発生する「ブレーキダスト」です。
ブレーキパッドが摩耗すれば、当然ダストは発生します。しかし、パッドの残量が少なくなってくると、パッドの温度が上がりやすくなり、通常よりも多くのダストが発生する傾向があります。
「最近、なんだか以前よりホイールの汚れがひどくなったな」と感じたら、それもパッドが消耗しているサインの一つかもしれません。
サイン⑤:目視による残量の確認
最も確実な方法は、ブレーキパッドの残量を直接目で見て確認することです。
ホイールのスポークの隙間から、奥にあるブレーキキャリパーを覗き込んでみてください。ディスクローターを挟み込んでいる部品がブレーキパッドです。パッドは、金属の土台(バックプレート)と、その表面に貼り付けられた摩擦材で構成されています。確認すべきは、この「摩擦材の厚み」です。
スマートフォンでライトを点灯させて照らすと見やすいでしょう。ただし、車種やホイールのデザインによっては非常に見えにくかったり、内側のパッドは確認が困難だったりします。
- ・新品時:約10mm
- ・交換を推奨される残量:3mm以下
- ・危険な状態:2mm以下
残量が2mmを切ると、パッドウェアインジケーターが鳴き始めたり、ブレーキ性能が著しく低下したりする可能性が高まります。定期点検や車検の際には、整備士が必ずこの残量を確認しています。タイヤ交換などの機会に、整備士に「ブレーキパッドの残量、見てもらえますか?」と一言声をかけてみるのが、最も簡単で確実な方法です。

第3章|走行距離と使用年数で見る交換時期の一般的な目安
車の使用状況は人それぞれですが、交換時期には一般的な目安も存在します。自分の車の走行距離や年数と照らし合わせてみましょう。
走行距離による交換目安
ブレーキパッドの寿命は、主に走行距離に比例して考えられます。
一般的な乗用車の場合、フロント(前輪)のブレーキパッドは3万kmから5万kmでの交換が目安とされています。車の重量の多くが前にかかり、ブレーキング時の荷重もフロントに集中するため、リア(後輪)よりもフロントの方が2倍近く早く摩耗する傾向があります。
軽自動車は普通車に比べて車重が軽いため、ブレーキへの負担も少なく、パッドの寿命は比較的長い傾向にあります。4万kmから6万kmが交換の一つの目安です。
ハイブリッド車やEVには、モーターの抵抗を利用して発電しながら減速する「回生ブレーキ」というシステムが搭載されています。通常のブレーキ(摩擦ブレーキ)の使用頻度がガソリン車に比べて格段に少ないため、ブレーキパッドの寿命は非常に長く、10万km以上無交換で走行できるケースも珍しくありません。
使用年数による交換目安
走行距離が少なくても、年数が経過すれば交換が必要になる場合があります。一般的には4年~5年が一つの目安とされています。ブレーキパッドの摩擦材は樹脂などで固められているため、時間とともに硬化したり、湿気や熱の影響で性能が劣化したりする可能性があるためです。
こんな乗り方は要注意!ブレーキパッドの寿命を縮める運転スタイル
上記の目安はあくまで平均的なものです。同じ車種でも、乗り方によってパッドの寿命は大きく変わります。以下のような運転スタイルは、パッドの消耗を早める原因となります。
信号や渋滞で発進と停止を繰り返す街中での運転は、ブレーキの使用頻度が非常に高くなります。そのため、高速道路を一定速度で走り続ける運転に比べて、パッドの摩耗は格段に早くなります。
長い下り坂では、速度をコントロールするために断続的にブレーキを使い続けることになります。これはブレーキシステムに大きな負担をかけ、パッドの摩耗を促進します。
「急」がつく運転は、車に大きな負担をかけます。特に急ブレーキは、パッドとローターに強い摩擦と高熱を発生させ、寿命を縮める最大の要因の一つです。
乗車人数が多かったり、重い荷物を積んだりして走行することが多い場合、車全体の重量が増すため、車を止めるためにより大きな制動力が必要になります。その結果、ブレーキパッドへの負担が増え、消耗が早まります。
穏やかな運転を心がけ、エンジンブレーキを効果的に使うことで、ブレーキパッドの寿命を延ばし、燃費向上にもつなげることができます。
第4章|ブレーキパッド交換を怠るとどうなる?放置する3つの重大なリスク

「まだ大丈夫だろう」と交換を先延ばしにすると、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。ここでは、ブレーキパッドの交換を怠った場合に起こりうる、3つの重大なリスクについて解説します。
リスク①:重大な事故につながるブレーキ性能の著しい低下
最も恐ろしいリスクは、言うまでもなく事故の危険性です。
摩耗しきったブレーキパッドでは、正常な摩擦力を発生させることができません。その結果、
- ・制動距離が伸び、追突事故を起こす
- ・緊急時に車を止めきれず、歩行者を巻き込む
- ・下り坂でブレーキが効かなくなり、制御不能に陥る
といった、命に関わる深刻な事態に発展する可能性があります。ブレーキは、安全運転の最後の砦です。その性能を万全に保つことは、ドライバーの最も重要な責務と言えるでしょう。
リスク②:他の高価な部品を破損させ、修理費用が跳ね上がる
経済的なリスクも非常に大きくなります。ブレーキパッドの交換を怠ると、ダメージはパッドだけに留まりません。
前述の通り、パッドの摩擦材が完全になくなると、金属製のバックプレートが直接ディスクローターに接触します。硬い金属同士が高速で擦れ合うため、レコード盤のように深い傷が刻み込まれてしまいます。こうなると、ディスクローターは研磨(表面を削って平らにする)するか、新品に交換するしかありません。
さらに摩耗が進行すると、キャリパーのピストンが必要以上に飛び出してしまい、ピストン自体やその周辺のシール類を傷つけてしまうことがあります。こうなると、キャリパーのオーバーホール(分解清掃・部品交換)や、最悪の場合はキャリパー自体の交換が必要になり、修理費用はさらに高騰します。
- ・ブレーキパッド交換のみの場合(フロント左右):約15,000円~
- ・パッド+ディスクローター交換になった場合(フロント左右):約40,000円~80,000円以上
このように、適切な時期に交換していれば数万円で済んだはずの修理が、放置したことによって数倍の出費になってしまうのです。「安物買いの銭失い」ならぬ、「先延ばしの高額出費」という結果を招いてしまいます。
リスク③:車検に通らない
車検では、ブレーキが国が定める基準値を満たしているか、専用のテスターで厳しく検査されます。ブレーキパッドの残量が極端に少なかったり、制動力が著しく低下していたりすれば、当然ながら車検に合格することはできません。
車検の時に「ブレーキパッドが摩耗しているので交換が必要です」と言われ、想定外の追加費用が発生するケースは非常に多いです。日頃から点検を心がけていれば、計画的に交換費用を準備することができます。
第5章|ブレーキパッド交換にかかる費用と時間のすべて
実際にブレーキパッドを交換するとなると、気になるのは費用と時間です。ここでは、その内訳や依頼先による違いについて詳しく見ていきましょう。
費用の内訳(部品代+工賃)
ブレーキパッド交換費用は、大きく分けて「部品代」と「工賃(技術料)」で構成されています。
- ・部品代:ブレーキパッド本体の価格。純正品か社外品か、またパッドの材質によって価格は変動します。(例:5,000円~15,000円程度)
- ・工賃:交換作業にかかる技術料。依頼する店舗や地域によって異なります。(例:6,000円~12,000円程度)
依頼先別!費用相場と特徴の比較
ブレーキパッドの交換は、主にディーラー、カー用品店、整備工場などで依頼できます。それぞれの特徴と費用相場は以下の通りです。
- ☆ディーラーの特徴:
- メーカーの純正部品を使用するため、品質や信頼性は最も高い。
- その車種を熟知した整備士が作業するため、安心感がある。
- 工賃は比較的高めに設定されていることが多い。
- こんな方におすすめ:品質と安心感を最優先したい方、車のことを全て任せたい方。
- ☆カー用品店の特徴:
- 費用が比較的リーズナブル。
- 純正同等品からスポーツタイプまで、様々な種類の社外品パッドから選べる。
- 店舗数が多く、気軽に依頼しやすい。
- こんな方におすすめ:費用を抑えたい方、自分の好みのパッドを選びたい方。
- ☆整備工場の特徴:
- ディーラーよりは安く、カー用品店と同等か少し高いくらいの価格設定が多い。
- 地域に密着した工場が多く、親身に相談に乗ってくれる場合がある。
- 工賃は工場によって差が大きい。
- こんな方におすすめ:信頼できるかかりつけの整備工場がある方、柔軟な対応を求める方。
※上記はあくまで目安です。車種や使用するパッドによって費用は大きく変動します。正確な金額は、必ず事前に見積もりを取って確認しましょう。
フロントとリア、どちらを交換する?費用の違いは?
前述の通り、一般的にはフロントのブレーキパッドの方が早く摩耗します。そのため、「フロントのみ交換」というケースが多いです。リアのブレーキパッドは、フロントを2回交換する間に1回交換する、くらいのサイクルが一般的です。費用も、構造がシンプルなリアの方が若干安くなる傾向にあります。
同時に交換を推奨される部品とその費用
ブレーキパッド交換の際には、関連部品の状態もチェックし、必要に応じて同時に交換・メンテナンスを行うことで、二度手間を防ぎ、ブレーキシステム全体の性能を良好に保つことができます。
- ・ブレーキフルード交換:
- ブレーキフルードは空気中の水分を吸収して劣化する性質があり、2年ごとの交換が推奨されています。パッド交換と同時に行うと工賃を節約できる場合があります。(費用:約5,000円~10,000円)
- ブレーキフルードは空気中の水分を吸収して劣化する性質があり、2年ごとの交換が推奨されています。パッド交換と同時に行うと工賃を節約できる場合があります。(費用:約5,000円~10,000円)
- ・ブレーキディスクローター研磨・交換:
- ローター表面に凹凸やサビがある場合、新品のパッドに交換しても本来の性能が発揮できません。軽度であれば研磨、摩耗が進んでいる場合は交換が必要です。(費用:研磨 約10,000円~、交換 約20,000円~)
- ローター表面に凹凸やサビがある場合、新品のパッドに交換しても本来の性能が発揮できません。軽度であれば研磨、摩耗が進んでいる場合は交換が必要です。(費用:研磨 約10,000円~、交換 約20,000円~)
- ・キャリパーオーバーホール:
- ピストンの動きが悪い、フルード漏れがあるなどの場合に必要となります。(費用:約15,000円~)
交換にかかる作業時間の目安
ブレーキパッドの交換作業自体は、比較的スムーズに進めば1時間~2時間程度で完了します。ただし、ディスクローターの交換や他の作業が加わったり、店舗の混雑状況によっては、半日程度車を預ける必要がある場合もあります。
第6章|Q&A ブレーキパッド交換に関するよくある質問
最後に、ブレーキパッド交換に関して多くの方が抱く疑問にお答えします。
Q. DIYでのブレーキパッド交換は可能ですか?
A. 結論から言うと、「可能ですが、全くおすすめできません」。
ブレーキは、車の部品の中でも「重要保安部品」に指定されており、その整備不良は直接人命に関わります。作業には、ジャッキやリジッドラック(ウマ)などの安全装備、キャリパーピストンを戻すための特殊工具、そして何より正確な知識と技術が必要です。
ボルトの締め付けトルクが不適切だったり、エア抜きが不完全だったりといった些細なミスが、走行中のブレーキ脱落やブレーキが効かなくなるなどの致命的なトラブルにつながります。工賃を節約したい気持ちは分かりますが、安全には代えられません。必ず国から認証を受けたプロの整備士に依頼してください。
Q. ブレーキパッドは前後同時に交換する必要がありますか?
A. 必ずしも同時交換の必要はありません。
前述の通り、フロントとリアでは摩耗のスピードが異なります。そのため、摩耗している側だけを交換するのが一般的です。ただし、左右のブレーキパッドは必ずセットで交換します。片側だけ交換すると、ブレーキの効きに左右差が生まれてしまい、非常に危険です。
Q. 交換後、何か気をつけることはありますか?(慣らし運転の必要性)
A. はい、交換直後は「当たり付け」と呼ばれる慣らし運転が必要です。
新品のブレーキパッドとディスクローターの表面は、まだ完全には馴染んでいません。交換直後に急ブレーキを踏むと、異常摩耗や「鳴き」の原因になることがあります。交換後、100km~200km程度は、急ブレーキや急な操作を避け、穏やかな運転を心がけてください。そうすることで、パッドとローターの表面が滑らかに整い、本来の性能を最大限に発揮できるようになります。
Q. 車検の時に交換すれば大丈夫ですか?
A. 車検のタイミングまで待つのは危険な場合があります。
車検は2年に1度です。その間にブレーキパッドが寿命を迎えてしまう可能性は十分にあります。異音や効きの悪さといったサインを感じたら、車検の時期に関わらず、速やかに点検・交換を行いましょう。車検はあくまで「その時点での保安基準を満たしているか」を確認するものであり、次の車検までの安全を保証するものではありません。
まとめ:異変を感じたらすぐ相談を!定期的な点検で安全なカーライフを
今回は、ブレーキパッドの交換時期について、そのサインから費用、リスクに至るまで詳しく解説してきました。
【この記事の重要ポイント】
- ・ブレーキパッドは安全を守る最重要部品であり、必ず消耗する。
- ・「キーキー音」「効きの悪化」「フルード減少」などのサインは絶対に見逃さない。
- ・交換目安は走行3万~5万kmだが、乗り方によって大きく変わる。
- ・交換を怠ると、高額な修理費用や重大な事故につながるリスクがある。
- ・費用は依頼先によって異なる。安心と費用のバランスを考えて選ぼう。
- ・交換は命に関わる作業。必ずプロの整備士に任せる。
ブレーキパッドの交換は、故障してから修理する「事後整備」ではなく、トラブルを未然に防ぐ「予防整備」です。日頃から愛車の小さな変化に気を配り、少しでも「おかしいな?」と感じたら、迷わずディーラーや整備工場に相談してください。
定期的な点検と適切な時期の部品交換こそが、あなたの愛車を長持ちさせ、何よりもあなたと大切な人の命を守ることに繋がります。この記事が、皆様の安全で快適なカーライフの一助となれば幸いです。


- 出身地
- 埼玉県所沢市
- 担当部署
- リテール営業
- 略 歴
- 2019年にオートアベニューへ転職入社。
「お客様に寄り添う」をモットーに、快適なカーライフの提供に邁進中。新車、中古車、車検などの整備についての最新情報を発信!お客様からの「ありがとう。」を糧に毎日を全力で駆け抜けています!

- 出身地
- 東京都西東京市
- 役 職
- 株式会社オートアベニュー 代表取締役社長
- 略 歴
-
1995年~1996年 オートアベニューでアルバイトをする
1997年~2002年 夫の仕事の関係で5年間オーストラリアへ
2002年4月~ 帰国後 株式会社オートアベニュー入社
2005年 株式会社オートアベニュー 専務取締役 就任
2008年 株式会社オートアベニュー 代表取締役社長 就任 今に至る
車業界歴約30年。現在100年に一度の変革期と言われている車業界、EV化・自動運転・空飛ぶ車などに加え、車検法などの各種法律関係で多くの法改正が行われています。
今まで学んだ多くの事や車業界界隈の様々な事をわかりやすく、皆様にお伝えいたします。