オールシーズンタイヤはやめておくべき?メリット・デメリット、寿命、雪道規制の真実まで完全網羅
目次
はじめに:タイヤ交換の常識が変わる?

「またタイヤ交換の時期が来たか……」
春と冬、年に2回訪れるタイヤ交換の手間。重いタイヤを車に積み込み、お店に予約の電話をかけ、待ち時間に耐え、数千円の工賃を支払う。あるいは、自宅のベランダや物置がタイヤで埋め尽くされていることにストレスを感じている方も多いのではないでしょうか。
そんなカーライフの悩みを一挙に解決する選択肢として、近年急速に注目を集めているのが「オールシーズンタイヤ」です。その名の通り、春・夏・秋・冬、すべての季節を一本のタイヤで走り抜けることができるこのタイヤは、欧米ではすでにスタンダードな存在ですが、日本でも気候変動やライフスタイルの変化により導入するドライバーが増えています。
しかし、「本当に雪道で滑らないの?」「夏はうるさくないの?」「寿命は短いの?」といった疑問や不安も尽きません。本記事では、オールシーズンタイヤの仕組みから、経済的なメリット、命に関わるデメリット、そして最新のメーカー動向まで、徹底的に解説します。これを読めば、あなたがオールシーズンタイヤを選ぶべきかどうかが明確になるはずです。
オールシーズンタイヤとは何か
オールシーズンタイヤ(All Season Tire)とは、文字通り「四季を通じて使用できる全天候型タイヤ」のことです。ドライな路面や雨の日はもちろん、軽い雪道(浅雪、シャーベット状の雪、圧雪)でも走行できるように設計されています。
夏タイヤ・冬タイヤとの違い(性能マトリクス)
理解を深めるために、一般的なサマータイヤ(夏用)、スタッドレスタイヤ(冬用)、そしてオールシーズンタイヤの性能を比較してみましょう。
・サマータイヤ: ドライ・ウェット性能に優れ、燃費や低騒音性能が高い。しかし、雪道ではゴムが硬くなり全くグリップしない。
・スタッドレスタイヤ: 雪道・凍結路(アイスバーン)に特化。ゴムが非常に柔らかく、低温でも柔軟性を保つ。しかし、雨の日の排水性や夏のドライ路面での摩耗耐性は低い。
・オールシーズンタイヤ: 上記2つの中間的な性質。特殊なゴム(コンパウンド)と溝(トレッドパターン)の設計により、夏タイヤに近いドライ性能を持ちながら、冬タイヤのように雪を噛む力を持つ
見分け方:「M+S」と「スノーフレークマーク」の重要性
オールシーズンタイヤを選ぶ際、最も重要なのがサイドウォール(側面)に刻印されたマークです。
M+S(マッド&スノー)
泥(Mud)と雪(Snow)に対応していることを示します。しかし、これはメーカーの自己申告に近い基準であり、厳しい冬道性能を保証するものではありません。
スノーフレークマーク(3PMSF)
山の中に雪の結晶が描かれたマーク。「スリーピーク・マウンテン・スノーフレーク」と呼ばれます。これは、国連欧州経済委員会などの公的機関が定めた厳しい寒冷地テスト(ASTM試験)に合格した証です。
重要: 日本でオールシーズンタイヤを購入する場合は、必ずこの「スノーフレークマーク」が付いているものを選んでください。このマークがないと、高速道路の冬用タイヤ規制時に通行できない場合があります。
なぜ今、日本で普及しているのか
かつて日本の冬といえば「豪雪」か「乾燥」かが明確でしたが、近年の気候変動により、「普段は降らないが、年に数回ドカ雪が降る」「暖冬傾向だが突然の寒波が来る」という予測不能な天候が増えています。
「スタッドレスを買うほどではないが、雪の日に車が出せないのは困る」という都市部ユーザーのニーズと、タイヤ技術の進化による性能向上がマッチし、急速にシェアを拡大しているのです。
導入の3大メリット
オールシーズンタイヤ最大の魅力は、その利便性と経済性にあります。
①経済的メリット:交換工賃と保管料の削減試算
タイヤを2セット(夏用と冬用)持つ場合と、オールシーズンタイヤ1セットの場合で、3年間にかかるコストを比較してみましょう。
夏・冬 2セット運用の場合
・スタッドレスタイヤ&ホイール購入費:約6万〜10万円
・交換工賃(年2回×3年):約24,000円(1回4000円想定)
・タイヤ保管料(必要な場合):約30,000円〜(年間1万円想定)
合計追加コスト:10万〜15万円以上
オールシーズンタイヤの場合
・夏タイヤからの履き替え費用のみ。季節ごとの交換費用は0円。
・保管料も0円。
このように、ランニングコストだけで数万円の節約になります。特にホイールセットを新たに買う必要がない点は大きなメリットです。
②時間的メリット:繁忙期の予約合戦からの解放
雪予報が出た直後のカー用品店やガソリンスタンドは、タイヤ交換待ちで長蛇の列になります。「3時間待ち」と言われることも珍しくありません。また、事前の予約も都合の良い日程調整はなかなか難しいものです。
オールシーズンタイヤなら、この「季節ごとの儀式」から完全に解放されます。突然の雪予報でも慌てることなく、そのまま車に乗って出かけることができます。
③保管場所のメリット:マンション・アパート住まいの救世主
一軒家で広いガレージがあるなら問題ありませんが、マンションやアパート住まいの場合、外したタイヤ4本の置き場所は深刻な問題です。ベランダに置くにしても運搬が重労働ですし、有料のタイヤ預かりサービスを利用すればコストがかかります。
オールシーズンタイヤなら「履いているタイヤが全て」なので、保管スペース問題が物理的に消滅します。

知っておくべきデメリットとリスク
メリットばかりではありません。オールシーズンタイヤには明確な弱点があり、これを理解せずに購入すると事故につながる恐れがあります。
最大の弱点「凍結路面(アイスバーン)」
ここが最も重要です。オールシーズンタイヤは「凍った道(アイスバーン)」には非常に弱いです。
スタッドレスタイヤは、氷の上の水膜を除去し、氷に密着する特殊な技術が使われていますが、オールシーズンタイヤはあくまで「雪を踏み固める(雪柱せん断力)」ことには長けていても、「氷に密着する」能力はスタッドレスに劣ります。
北海道や東北、北陸などの、路面が日常的に凍結する地域では、オールシーズンタイヤは主役になれません。あくまで「雪道」は走れますが、「氷道」は苦手であることを肝に銘じてください。
低騒音性能と乗り心地の変化
オールシーズンタイヤは、雪を噛むためにトレッドパターン(溝の形)がV字型など複雑な形状をしています。そのため、一般的なサマータイヤに比べると、「ゴー」というロードノイズ(パターンノイズ)が大きくなる傾向があります。
ただし、近年のプレミアムモデル(ミシュランやブリヂストンなど)はかなり低騒音性能が向上しており、敏感な人でなければ気にならないレベルまで進化しています。
夏タイヤとしてのグリップ性能と燃費
冬の性能を持たせるためにゴムを柔らかくしているため、真夏の炎天下での激しいスポーツ走行には向きません。グリップ力はスポーツタイヤには及びません。また、転がり抵抗もエコタイヤ(低燃費タイヤ)に比べると若干劣る傾向がありましたが、これも最新モデルでは改善されつつあります。
オールシーズンタイヤは誰におすすめ?

メリットとデメリットを踏まえると、向き不向きがはっきりします。
【おすすめできる人・地域】
- 地域: 関東(東京・神奈川・千葉など)、東海(名古屋など)、関西(大阪・兵庫など)、九州の平野部など、「雪は降っても年に数回、積もっても数センチ」という非降雪地域。
- 用途: 買い物、送り迎え、近場のレジャーなどの日常使い。
- 環境: マンション住まいでタイヤの保管場所がない人。タイヤ交換の手間を省きたい人。
- 考え方: 「大雪の日は無理して車に乗らない」「公共交通機関を使う」という割り切りができる人。
【おすすめできない人・地域】
- 地域: 北海道、東北、北陸、山陰などの豪雪地帯、および標高の高い山間部。
- 用途: 毎週末スキーやスノボに行く人。仕事で早朝・深夜(路面凍結リスクが高い時間帯)に必ず車を出さなければならない人。
- 環境: 坂道の多い地域に住んでおり、凍結路面での発進・停止が頻繁に必要な人。
「やめたほうがいい」と言われる理由の深掘り
ネット検索で「オールシーズンタイヤ やめたほうがいい」というワードが出てくる主な理由は、「中途半端だから」という過去のイメージと、「凍結路面での事故リスク」への懸念です。
しかし、最新のオールシーズンタイヤは性能が飛躍的に向上しています。「過信せず、凍結路では慎重に運転する(または運転しない)」という正しい運用ができれば、これほど合理的な選択肢はありません。
高速道路の規制と車検対応
法律や規制面での扱いはどうなっているのでしょうか。
「冬用タイヤ規制」は通行可能か?
高速道路で雪が降ると発令される「冬用タイヤ規制(滑り止め装置装着規制)」。
スノーフレークマーク(3PMSF)が付いているオールシーズンタイヤであれば、この規制下でも通行可能です。現場の係員によるタイヤチェックでも、サイドウォールのマークを見せれば通過できます。
※古いタイプの「M+S」のみのタイヤでは通行できない場合があるため注意が必要です。
「チェーン規制」時の対応ルール
さらに雪が激しくなると発令される「全車両チェーン装着規制(チェーン規制)国交省が指定する大雪時の特別規制」。
この規制が出た場合は、スタッドレスタイヤであっても、オールシーズンタイヤであっても、タイヤチェーンを装着しなければ通行できません。
つまり、オールシーズンタイヤを履いていても、万が一の豪雪やチェーン規制に備えて、布製チェーン(オートソックなど)等の簡易チェーンをトランクに積んでおくのが最強の布陣と言えます。
車検は通るのか
全く問題なく通ります。スリップサインが出ていない限り、タイヤの種類によって車検が不合格になることはありません。
寿命・メンテナンスと交換時期
オールシーズンタイヤは夏も冬も走り続けるため、「寿命が短いのでは?」と思われがちですが、実際はどうでしょうか。
走行距離と年数の目安
一般的なオールシーズンタイヤの寿命は、走行距離で約3万〜4万キロ、年数で約3〜4年程度と言われています。これはサマータイヤとほぼ同等か、製品によってはロングライフ性能を強化したもの(ダンロップなど)もあります。
スタッドレスタイヤは、ゴムが硬くなると3年程度で冬用タイヤとしての寿命を終えますが、オールシーズンタイヤは夏タイヤベースのコンパウンド技術を用いていることが多く、比較的長く性能を維持できます。
ローテーションの重要性
一年中履き続けるため、前輪と後輪の摩耗差が出やすくなります。5000km〜10,000kmごとにタイヤの前後を入れ替える「ローテーション」を行うことで、偏摩耗を防ぎ、寿命を延ばすことができます。季節ごとの交換がない分、点検の機会が減りがちなので、意識的に空気圧チェックとローテーションを行うことが大切です。
プラットホームの有無とスリップサイン
スタッドレスタイヤには、50%摩耗したことを示す「プラットホーム」がありますが、オールシーズンタイヤの多くのモデルにも、冬用タイヤとしての使用限度を示すサインがあります。
・スノーインジケータ(プラットホーム): ここまで摩耗すると、雪道性能は保証されません(夏タイヤとしてはまだ使えます)。
・スリップサイン: 残り溝1.6mm。ここまで摩耗すると法律上走行できません。
主要メーカー・ブランドの特徴比較
現在、日本市場で購入できる主要なオールシーズンタイヤの特徴を解説します。
1. MICHELIN(ミシュラン):CROSSCLIMATE 2(クロスクライメート ツー)
- ・特徴: 「雪も走れる夏タイヤ」というコンセプト。ドライ・ウェット性能が非常に高く、サマータイヤと遜色ない走り心地と低騒音性能を実現しています。雪道性能も高く、オールシーズンタイヤのベンチマーク的存在。
- ・おすすめ: 走行性能や低騒音性能を妥協したくない、輸入車や高級車ユーザー。
2. GOODYEAR(グッドイヤー):VECTOR 4SEASONS(ベクター フォーシーズンズ)
- ・特徴: 日本におけるオールシーズンタイヤのパイオニア。国産車向けのサイズラインナップが豊富で、軽自動車からミニバンまで対応。「雪道性能」と「ドライ性能」のバランスが良い優等生タイプ。
- ・おすすめ: 実績重視で選びたい人、幅広い車種に乗る人。
3. DUNLOP(ダンロップ):ALL SEASON MAXX AS1(オールシーズン マックス)
- ・特徴: 「長持ち」に定評があるダンロップらしく、夏タイヤ以上のロングライフ性能を謳っています。急な雪にも対応しつつ、経済性を最優先したいユーザー向け。
- ・おすすめ: とにかく長く履きたい、コスパ重視の人。
4. YOKOHAMA(ヨコハマ):BluEarth-4S AW21(ブルーアース)
- ・特徴: ウェット性能に定評のあるヨコハマらしく、雨の日の安心感が高いモデル。日本の雪質(湿った雪)を考慮したトレッドパターンを採用。
- ・おすすめ: 雨の日も安心して走りたい人。
5. BRIDGESTONE(ブリヂストン):MULTI WEATHER(マルチウェザー)
- ・特徴: スタッドレストップシェアのブリヂストンが出した答え。あえてスタッドレスブランドの「ブリザック」の名は冠さず、量販店限定などで展開。雪道性能への過信を防ぎつつ、ブリヂストン品質の安心感を提供。
- ・おすすめ: ブリヂストンブランドへの信頼感を重視する人。
よくある質問(FAQ)
Q1. 燃費は悪くなりますか?
A. 最近のモデル(特にミシュランやダンロップ)は、転がり抵抗を低減しており、一般的なサマータイヤとほとんど変わらない燃費性能を実現しています。スタッドレスを通年履くよりは圧倒的に燃費が良いです。
Q2. 夏場の雨の日は滑りませんか?
A. オールシーズンタイヤは、深い溝により排水性が高いため、むしろ一部のサマータイヤよりもハイドロプレーニング現象(水に乗って滑る現象)が起きにくい特性があります。雨の日には強いタイヤと言えます。
Q3. 自動車保険(任意保険)への影響は?
A. オールシーズンタイヤだからといって保険料が変わったり、補償対象外になったりすることはありません。ただし、夏タイヤで雪道を走り事故を起こした場合は「重過失」を問われる可能性がありますが、スノーフレークマーク付きのオールシーズンタイヤであれば、雪道装備として認められます。
Q4. タイヤの保管はどうすればいい?
A. 履きっぱなしなので保管の必要はありません!これが最大のメリットです。
まとめ:あなたのカーライフにオールシーズンタイヤは必要か
ここまでオールシーズンタイヤについて詳しく解説してきました。最後に要点をまとめます。
オールシーズンタイヤを選ぶべきなのはこんな人
・非降雪地域(東京・大阪など)に住んでいる
・スタッドレスへの交換費用や手間をなくしたい
・タイヤの保管場所に困っている
・凍結路面(アイスバーン)では車を使わない判断ができる
オールシーズンタイヤを選んではいけない人
・豪雪地帯に住んでいる
・凍結した坂道を走る必要がある
・絶対的な低騒音性能やスポーツ性能を求めている
オールシーズンタイヤは、決して「万能な魔法のタイヤ」ではありません。「氷」という明確な弱点があります。しかし、日本の都市部のような「年に数回降るか降らないか」という環境においては、コストパフォーマンスと利便性が極めて高い、理にかなった選択肢です。
技術の進化により、かつての「どっちつかず」という評価は過去のものとなりつつあります。ご自身の住環境と車の使い方を照らし合わせ、もし条件に合致するのであれば、次のタイヤ交換時にはぜひオールシーズンタイヤを検討してみてください。タイヤ交換の煩わしさから解放された、スマートなカーライフが待っています。

- 出身地
- 埼玉県所沢市
- 担当部署
- リテール営業
- 略 歴
- 2019年にオートアベニューへ転職入社。
「お客様に寄り添う」をモットーに、快適なカーライフの提供に邁進中。新車、中古車、車検などの整備についての最新情報を発信!お客様からの「ありがとう。」を糧に毎日を全力で駆け抜けています!
- 出身地
- 東京都西東京市
- 役 職
- 株式会社オートアベニュー 代表取締役社長
- 略 歴
-
1995年~1996年 オートアベニューでアルバイトをする
1997年~2002年 夫の仕事の関係で5年間オーストラリアへ
2002年4月~ 帰国後 株式会社オートアベニュー入社
2005年 株式会社オートアベニュー 専務取締役 就任
2008年 株式会社オートアベニュー 代表取締役社長 就任 今に至る
車業界歴約30年。現在100年に一度の変革期と言われている車業界、EV化・自動運転・空飛ぶ車などに加え、車検法などの各種法律関係で多くの法改正が行われています。
今まで学んだ多くの事や車業界界隈の様々な事をわかりやすく、皆様にお伝えいたします。







